Sunday, March 19, 2006

ようやく

「海辺のカフカ」読了。買ったのは去年の8月だってのに…。でも、読んだのにかかったのは四日間。旅行中に読んだから、あっという間だった。つまり、手に取るまでに物凄い時間がかかった。その間に何冊も日本から小説を送ってもらって、サササと読んでいたのに。
基本的に、ハヤリモノは嫌いだから、村上さんもちょっと遠慮していたのだった。そして、買ってすぐ読んでみた、第一章がちょっと嫌だったのだ。二章目から一気に面白くなっていた。以下感想。

上手い。物凄く上手いと思う。さすがです。例えば「窓が開いた」という現象に対して、カフカの話と、ナカタさんの話で、物事の形容方法が全く違うところ。カフカの、とりあえず何でもメタフィジカルに、「繊細に」、裏読みしたり深読みする性質は、そのまま全ての描写に表れている。一方、ナカタさんの章では、全てがわりかしアッサリと、淡々と描写されていく。結局「物語」なんてのは主観の枠を出ないことを、こういう風に表現するのかと驚いた。謎を全ては明かさないところも好印象。妙に現実的な非現実も自分の好きなタイプだ。

ただ、どうしてもカフカの話が好きになれなかった。青臭すぎて。なーにグダグダ言ってんだよ、って。大島さんも、個人的に好きなタイプではない。登場人物の好き嫌いが、小説の善し悪しを決めないのは当然だし、嫌いな人物ばかりだけど好きな小説、もある。でも、上に書いたように、意図的に登場人物の感覚が文章に反映されている以上、やはり好きにはなれなかった。話の流れは好きだったけど。一方のナカタさん話は、最高。ホシノ君がいい人すぎてちょっとパンチ不足な気もしたけど。あぁあと、最後の方(閉める辺り)が、妙に「神秘の冒険」臭いのが好きではなかったけど。ずっとナカタさんの話にしてくれれば良かったのに、少年時代からの。

あーそうそう、謎が謎のまま終わるのは別にいいんだけど、「ナカタさんが少年時代に開けちゃった話」と「佐伯さんが昔開けちゃった話(←説明無さ過ぎ!)」は、もうすこし書いて欲しかった…。空を飛んでたのと、何の関係があったのやら、気になる。

何にしても、ここ最近で一番「夢中で」読んだ本には間違いない。前ここまではまったのは「麦踏みクーツェ」かなぁ。ちょっと似ている気もする。作者の顔は明らかに似ている(笑)。向こうは、もっと謎はカチカチとはまるんだけど、それ以前の「感覚」(? というか前提・枠組み)が意味不明なところが違うかなぁ。